世界最大の延期

 ゴジラvsコングの公開が延期した。

 本来であれば、5/14に公開されるはずであり、その日は偶然にも私は有休を取るつもりだったのだが、延期となってしまっては偶然もへったくれもなく、有休を取ることを止めてしまった次第である。

 もしかしたら、ここまでの文章でお気付きの方もいらっしゃるかもしれないが、並の読解力の読者諸君は当然、気付いてないはずなので、言っておくが、私はゴジラが大好きである。もし、気付かれていたならば、今の文章は読み飛ばしていただいて、構わない。

 ゴジラといえば、シン・ゴジラが日本全国で話題になったことは記憶に新しいだろう。本当ならファイナルウォーズでゴジラは終わり、二度と我々の前に姿を現さないはずだったのだが、14年にハリウッド版ゴジラによって復活を果たし、その余波でシン・ゴジラが生まれ、キング・オブ・モンスターズが来るわけだが、今回はvsコングの話ができないので、キング・オブ・モンスターズの話をしようと思う。

 よし、今回は前置きが短いぞ、偉いぞ!

 さて、シン・ゴジラが公開され、世間で話題になった時、今までゴジラに興味のなかった方々もゴジラを見ていただく結果となり、嬉しい限りであったのだが(オイオイ、キング・オブ・モンスターズの話をするんじゃなかったのかよ、と思ったそこの貴方!うるせぇ、もうちょっと黙って聞いてろ)、そこからゴジラシリーズにも興味を持ってもらった人も少なくなかったはず、私の周りにもちらほらいた。

 そして、その人達は善意と好意を持って私達に無邪気な質問を投げ掛けてきたのだ。

「ねえねえ、シン・ゴジラ見たんだけど、他にゴジラって何がオススメなの?」

 うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん……????

 これに対する答えは決まっている。54年の初代ゴジラだ。これは満場一致でいいだろう。

 でも、この人が聞きたいのはそれじゃないよね?恐らくは、シン・ゴジラと初代ゴジラを外した上でどのゴジラがオススメかを問うているのだ。

 そして、この質問というのは実にゴジラ好きを悩ませる質問でもあるのだ。

 なぜなら、ゴジラシリーズはどの作品もそこそこしか面白くないのだ。(筆者の所感が大きく含まれております。決してこれはゴジラシリーズを非難する発言ではございません)

 個人の好みはあれど、「ゴジラシリーズの傑作はコレ!」と言い切れって他のゴジラファンを納得させられる作品がパッと思い浮かばない、といえば納得いただけるだろうか?

 大体、ゴジラシリーズというのはその時代のライブ感で出来ているノリと勢いの娯楽映画なので、ある程度の水準があれば、ゴジラファンはゴジラが出てくるだけで納得するし、正直、そういうもんなのだ。

 個人としては×メガギラスが好きなのだが、これが傑作だと納得してくれる人は少ないだろうし、興行成績がすこぶる悪く、以後、ミレニアムシリーズがハム太郎と抱き合わせになってしまう原因となる映画なのだから仕方がない。メガギラスという敵が地味なのがいけなかったんだな、うん、昆虫じゃ派手さがなく、見に行こうという気が起こらないのも納得できる。

 金を出して楽しむ娯楽コンテンツ、映画やマンガ、小説というのは実に歪な経済構造をしており、「面白いものに金を払う」というシステムではなく「面白いと予想されるものに金を払う」というシステムなのです。

 だから、広告が命で如何にハッタリを利かせられるかどうかが興行成績の鍵になり(無論、リピーター需要もあるので1回見させられれば、その後、成績は上がることもある)、かつ、見込み客の計算がしやすいシリーズものばかりが世に氾濫するのも仕方がなく、理屈的には納得できる。

 でも、それに味を占めすぎてなんでもかんでも○○バースとか言って連携させるのはどうかと思うぜ?モンスターバースも本音を言えば、vsコングでスパッと切り落としてくれていいと思ってるよ、ボクは。

 話が逸れた。

 何の話だったか?あ、そうそう、メガギラスにインパクトがないって話だ。うん、間違いなく、世間はワクワクしなかっただろうね。ボクはワクワクしたけど。ついでに、VSシリーズだとVSモスラが一番好きです。ただ単に昆虫が好きなだけなのかもしれない。どっちもみんな見ろ!

 ちなみに彼ら(私も含む)は駄作をあげろと言われれば、いくらでも喜んで話してくれる。

 ファイナルウォーズの面白くなさを喜々として語るし、VSギドラの余りにも高級な材料からできた味のしない料理を食レポしてくれる。みんなつまらない映画のことは共通認識として持ってる。

 これは私がよく(悪い例として)ネタにする話なのだが、14年ゴジラが公開されたとき、池袋でゴジラ展的なアレがあったのだが、そこで歴代ゴジラを紹介するコーナーがあった。

 そのコーナーには初代~ファミリー路線~VS~ミレニアム~ハリウッド版みたいな感じで区分されていたのだが、そこのファミリー路線のコメントに「怪獣王としての尊厳はもはやない」と書かれていた。

 いやいやいや、そんなこと流石に表立って書くなよ、と私もこのコメントには憤慨した。ちなみに、ミレニアムのところはノーコメントだった。

 訂正しよう、初代~ファミリー~VS~ハリウッド版と区分されていたのだ。なめんなよゴジラ!

 でもこれ、コメント求められた人、普通にミレニアム見てないんだろうなぁ、他の人呼んで来いよ。

 とまぁ、公式イベントすらこんな有様なので、及第点は越えても突出した面白さって言われると中々名前が挙がってこないっていうのが長い歴史がある癖にゴジラシリーズの不思議なところなのだ。

 さぁ、前置きは済んだので本題に移ろう。(なびるなくん、結局、前置きが長くなってる……)

 2019年5月の暮れ、金曜日。ボクは偶然にも(ここ大事)有休を取っていた。

 まぁ、そういうこともあるのだが、その日は狙ってもないのに、ゴジラ キング・オブ・モンスターズの公開日だった。

 そうとなっては行くしかないじゃない!と意気揚々とIMAX3Dを予約し、映画館へ向かったのだ。

 もちろん、1人だ。ボクは映画は1人で見に行くことが多く、これは決して友人がいないからでも、一緒に行ってくれる恋人がいないからでもない。いないです、恋人なんて人生でいたことありませんでした調子に乗って申し訳ありません。

 そして、おトイレコンディションを最良に整え(映画に行くときは映画開始の1時間半前から水・食料を断ち、映画中は飲食をせず、途中で尿意に晒されないよう最善の注意を払う。これがおトイレコンディション)、暗いスクリーンの真ん中中段にすっぽりと収まると3Dメガネを決め込んでゴジラの世界へとしけ込んだ。

 みんな観た?キング・オブ・モンスターズ観た?観てないって?え、ネタバレできねぇじゃん。さっさと見ろよばーか。

 キング・オブ・モンスターズを見終わったあと、ボクの体内から溢れ出した感想は大別して2つだった。

 まず、1つ目。

 令和始まって1ヵ月経ってないのに、令和最高傑作がすでに決まってしまったなぁ。

 そう、この5月に令和が始まったばっかりだというのにもう決着がついてしまったのである。いやぁ、申し訳ない。ウチのキング・オブ・モンスターズが令和最強を早々に決めてしまって本当に申し訳ない!

 でも、それほどの衝撃を受けたし、この序列はボクの中では未だに変わっていない。

 しかしながら、この映画が確かに一般向けというよりもすべてのゴジラファンに向けた映画だったという視点は確かにある。

 象徴的な場面が2箇所あるとボクは思っている。

 セリザワがゴジラに対して「さらば、友よ」と言ったシーン。正直、セリザワとゴジラがそんなに密に接していたシーンってのは少ない。だから、このセリフはセリザワの口から出たセリフではなく、劇場にいたボクらの口から出たセリフなのだ。セリザワはただただボクらの代弁者としての機能を持っていたに過ぎない。

 実はこのシーン、ゴジラファン以外、つまり、映画にストーリー性だの文学性だのといったくだらないものを持ち込み、特撮に本来求められる、デカブツとデカブツがドンパチし合うという要素を蔑ろにして語る映画評論家などという愚かな種族は、深掘りが少ないシーンだと大批判したらしい。というか、評論家的には世論を無視して、この映画のことを駄作だと評していたらしい。でも、ボクとゴジラはマブダチだし。

 あとはモスラが繭から孵った時、周りの人間すべてが無条件で笑みを浮かべていたシーン。あの世界の人間はモスラは絶対的に自分達の味方であることを知らない。でも劇場にいたボクらはモスラは何があろうとボクらの味方だと知っている。だから笑みを浮かべたのはボクらなのだ。

 正直、冷静に考えるとだいぶ気が狂ったシーンだと思う。しかし、ボクらとっちゃ、何も間違いがなく、キング・オブ・モンスターズというのはボクらと登場人物との境界線をなくしに来るファン目線ではだいぶ危険な映画だったと言えよう。ボクが虜になるのも無理はない。

 ここで2つ目の感想だ。

 オススメのゴジラ決まったな……。

 そう、やっと長年の問題に終止符が打たれたのである。キング・オブ・モンスターズこそが、ゴジラファンより満場一致でオススメされる映画だと言っていい。そして、オススメして、ファンと一般人との熱量の差に引かれるといい。

 もちろん、ボクも映画が終わった後、あまりのショックに30分程、ベンチで放心していた。

 そして、次に取った行動が、翌日のキング・オブ・モンスターズの席の予約である。

 それしか、今のこの熱量の処理の仕方がわからなかったのである。

 実は、翌日は友人と遊ぶ約束をしていた。

 だから2席取った。

 無断で。

 翌日、半ば騙されて一緒に観に行かせられる友人と映画館へ向かった。

 ほら、一緒に映画に行く友人くらいボクにもいるんですよ。なめないでくださいですの!

 そして、昨日は興奮しっぱなしで細かいところまで追い付いてなかった箇所まで脳をフル回転して観ていたら大発見をした。

 これはすごいことに気付いてしまったぞ、と。

 映画が終わった瞬間、ボクは隣の友人に声を掛けた。

「なぁ、この映画についてすごいことに気付いてしまったんだけど、しゃっべっていい?しゃべるね」

 そう言って有無も言わさずに意気揚々と喋り始める。

「怪獣が出てくる前進基地ってあったじゃん、あの基地の番号が該当する怪獣の出てくる映画の公開年数になってる!」

 気付いたのはラドンあたりだった。ラドンの映画が56年に対し、第56前進基地。モスラは61、ギドラは64を半分に割って32……。

 これに気付いたとき、なんて発見をボクはしてしまったんだと大興奮で、

「え?映画の年数覚えてんの?気持ち悪っ」

 ゴジラvsコングの逸早い公開を願うばかりである。

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