さて、第2話、舞台はインドだ。
昨日、デリー市内観光を終えた我々二人が今日(5/13)に向かうのはこの国で一番有名だと言っても差し支えないであろう、タージマハルである。
インドのハイライトだ。といってもインドには2日間しかいないのだが。
全体が大理石でできた墓廟でもちろん世界遺産にも指定されている。
また、人の手が簡単に触れるような壁や柱のいたるところに、瑪瑙や翡翠、ラピスラズリなどが紋様として埋め込まれており、白い大理石の印象も相まって非常にシンプルに美しく見える墓廟である。
これがシンプルに見える(実際に近づくとありとあらゆる箇所に細工が施されており、シンプルなんてとんでもないのだが)もう一つの要因としては、その幾何学的デザインであろう。
インドは数学の国で幾何学的に正確な建築をするのが得意であり、タージマハルは特にその傾向が顕著である。
墓廟を中心にシンメトリーにまとめ上げられており、それが無駄のない正確な趣を見せるのだろう。
また、大理石でできているので、光の影響を強く受け景観が変わることもタージマハルの特徴だ。
大理石は水晶を多く含んでおり、光を透過する。また、瑪瑙も透ける材質である為、光を効果的に取り込もうとする箇所に多く使われている。
結果、太陽の影響で景観が変わる。これもタージマハルの特徴だ。
このように様々な特徴があるのもあり、世界遺産だということもあり、タージマハルに入るのは非常に手荷物検査が厳しい。
まず、カバンはリュックなどの大型のものは駄目。
ナイフや火器などの危険物はもちろんだが、景観の影響からかライトも禁止だ。さらに絵を描くことができる筆記具やメモ帳の類も禁止らしい。
しかし、スマホや携帯電話の持ち込みはオッケーなので「今どきライトも絵もできてしまうのに?」とチグハグな気もしてしまう。
多分、絵が駄目というより、世界遺産に落書きできるもの、が禁止なのだろう。
デジタルカメラはオッケーだが、武器になりうる三脚や自撮り棒は駄目。
飲食物も駄目。薬はオッケーと言われたがあらぬ疑いをかけられるのもなんなので車内に置いていくことにした。
ダメそうなものや余計なものをカバンから抜いたら随分と軽くなってしまった。
さぁ、これで準備は万端だ。張り切ってタージマハル観光しよう。
タージマハルの近くにはあまりにも多くの観光客が来るため、車の排気ガスの影響を防ぐ為、少し離れた場所に駐車場があり、皆そこから電気自動車の乗合バスみたいのに乗って入り口まで移動する。とはいっても数百メートルの話だが。
そして、入り口に辿り着いたらチケットを購入し(ツアーガイドさんがやってくれた)、タージマハル付きのガイドさんから水をもらった。
これは嬉しい。
なにせ、現地では最高気温が40度を超えるのだ。もう立っているだけで汗だくで飲み物なしでは観光なんてできやしない。この水だけがタージマハル内に持ち込める唯一の飲料なので大切にしていきたい。
入り口は人でごった返していたが、人が多いのはインド人用で、フォーリナー向けの入り口は空いている。
インド内の観光施設には大概、インド人用の入り口とフォーリナー向けの入り口が分けられていた。
さらに、入場チケット代も分けられていた。フォーリナー向けのチケットはインド人に比べて大体5〜15倍程度だ。我々が1人1250ルピー≒2000円に対し、インド人は245ルピー≒400円、霊廟に入らず外観だけなら45ルピー≒70円らしい。えらいこっちゃ。
しかし、そのおかげでスムーズに入れているので文句は……スムーズに……ってあれ?
なにやら様子がおかしい。
私の手荷物に人が集まっている。
カバンにぶら下がっているものを見ている。
お守りだ。
出国の際に友人からもらった旅行安全祈願のお守りをぶら下げていた。しかし、よく考えてみればお守りは日本の神を祀ったものである為、もしかして宗教的なアレでアウトだったか?
と不安になりながら、お守りであることを伝えると、なんとか大丈夫だった。今、ニコライさんに聞いたらタージマハルはイスラム教とヒンドゥー教が混じってるらしいし、インドはそもそもいろんな宗教の人がいるから意外と我バい。単純にお守りがなにものなのか分からなかっただけのようだ。確かに中に何か入ってそうだしね。
さて、不安も晴れたことだし、気を取り直して、タージマハルへ……ってあれ?
なにやら様子がおかしい。
私の手荷物にまだ人が集まっている。
他に何かひっかかりそうなもの持っていたかなぁ?
と、考えていると……。
「コレハナンデスカ?」
あー……なるほど……ね。
これね……。
「これはお面です」
「フェイスマスク?」
「イエス」
「オー……」
「コレハダメネ。ロッカーニアズケテキマス」
駄目だった。
善戦虚しく社長のお面は没収となってしまった。
「コノオメンハナニ?」
ロッカーに向かう途中、ガイドさんに尋ねられた。ボクにはやましいことなど何一つないので、正直に答えることにする。
「これは一緒に来ることができなかったボク達の親友のお面です」
「コレハダメネ」
まぁ、そうですよね。親友って言ってるのにアイマスクとマスクをして素顔を見せていないクソみたいなお面ですもんね、そりゃ駄目っすよ。わかるわかる。
「コンナノモッテキタヒトハジメテダヨ」
ボクはその言葉を聞きながら、一昨日飛行機内で見た謎のインド映画を思い出していた。あの映画の中ではみんなが紙で作った他人の顔のお面を被って踊っていたが、実際にはそこまで開かれた文化がインドにはまだなかったらしい。
よかったな社長、インド初の男になれたぞ。
流石だな、社長。
その後、専用機器による動画撮影は禁止(スマホでの動画はOK)ということが判明し、ボクの360°カメラは手荷物検査を通ってしまっていたが、限りなくアウトであろうと察したので、そもそも360°動画は撮れません、というオチ。
だったらはじめから社長のお面なんてカバンに入れてかねぇよ。
つまり、完全に社長のお面は没収され損だったわけだね。悲しいね。
ということでインド編はここで終わり。
また、次の国でお会いしましょう。
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