#なびるな世界一周 へ行く〜第10話チリ編〜

#なびるな世界一周

 チリは滞在期間がたったの1泊だったので正直、何も起こらないだろうな、と思っていた。

 案の定、大したことも起こらず、強いて言うなら珍しく雨が降ったな、と思ったぐらいである。

 

 さて、チリはサンチアゴを離脱し、次に向かうのはアメリカだ。

 アメリカにはサンチアゴからマイアミで乗り換えニューヨークへと向かう。

 短い滞在だったサンチアゴを後にし、夜中のフライトでマイアミへ行く。

 ここで睡眠を摂りたいところであるが、今回残念なことにボクはうまく寝ることが出来なかった。

 まぁそんなこともあるだろう。どっかで帳尻を合わせて多く眠ろう。

 などと考えつつ、マイアミでアメリカへの入国審査を受けようとしていたところで、いつもながらたどたどしい英語で受け答えをしていたら、

 

 おや?なにやら様子がおかしいぞ?

 やけに時間がかかる。

 

「こっちへこい(意訳)」

 

 え?

 どういうこと?

 

 なんと入国審査で引っかかって別室へ連れて行かれたのである。

 我々のたどたどしい英語が大きな原因だろう。

 ボクははっきり言って英語は喋れない、ニコライさんはボクよりマシだとはいえ喋れるとは言い難いところだ。

 

 ここでみなさんの中にはなんで、チリ編なのにマイアミの話をしているんだ、とお思いの方もいるかも知れないが、今、我々はまだ入国できていないので身分的にはチリが一番最後だ。だから入国するまではチリ編だ。

 

 そんなことはともかく、別室に連れて行かれて正直な話、生きた心地がしなかった。

 そのうち、入国審査官に呼ばれ、また質問が開始される。

 この別室内ではスマホの翻訳アプリの使用が許可されたので、それを介しての弁明が主となる。

 

「この国へ来た目的はなんだ(意訳)」

「観光です」

「この国に来る前にはどこにいたんだ(意訳)」

「サンチアゴです」

「なんで突然海外旅行に来たんだ(意訳)」

 なんで突然?突然、って言われてもなぁ……。

 日本語で聞かれたとしても受け答えに困るような質問を英語で聞かれると尚困る。

「仕事を辞めて時間ができたので、今まで子供の頃にしか海外旅行に行ったことがなく、いい機会だったから」

 だいたいあってる気がするが、間違ってる気もする。

「なんで仕事を辞めたんだ(意訳)」

「給料が安く、仕事量も多かったから。改善を求めても改善されなかった」

 ↑ここ大事。

 いや、大事とか言ってる場合じゃない。何を言うのにもめちゃくちゃ緊張していた。生きた心地がしない。

 今日、この日ほど英語が喋れなくて後悔したことはない。

 もうボクは無理だけど、これからの日本の義務教育、頑張ってくれよ。

 ここまでスマホの画面越しにやり取りをしていた私達であったが突然、

「(※謎中国語のスマホ画面)」

 を突きつけられた。

「!?アイキャントリード」

 当然、読めないのでボクはそう答える。

 

 ああ、なるほどね、ボクらのことを中国人のブローカーか何かじゃないかと疑ってるわけだ。

 これで答えられたら、化けの皮が剥がれると。

 うーん、たしかに男二人組で南米に数カ国行ってる中国人だとしたら怪しいのも頷ける。

 結局のところ、こういうのは入国審査する人のさじ加減ではあるのだが、どういう疑いが上がっているのかがわかっただけでも気が楽になる。

 

「もう一人のやつとはどういう知り合いだ(意訳)」

「インターネットを通じて知り合った、Twitterとか」

 いや、怪しいな。怪しさに拍車をかけてしまった。

「なぜ?(意訳)」

 なぜって言われても難しいんだけど……。

「動画投稿とかをしている間柄だった。YouTubeとか」

 ニコニコ動画よりYouTubeの方が通じるだろう。

「お前のYouTubeを見せろ(意訳)」

 え!?YouTube見せるの!?入国審査官に!?

 ボクは仕方がないのでYouTubeのチャンネルを開いて入国審査官の渡す。

 入国審査官はボクのギガストリーム動画を見ながら。

「これ、お前か?(意訳)」

 とか聞いてきやがる。

「イエス、ミー」

 こんな虹色の服着てるやつはボクだよ。

 なんなら今、スーツケースを開いて見せてやろうか。

「なんでお前ら二人は名前が同じなんだ?(意訳)」

 はぁ???しらねえよ、オレの親にでも聞けよ。

 

 ここで補足します。

 ボクとニコライさんは下の名前が一緒です。

 完全に偶然なのですが、ややこしいことに海外ではファーストネームとラストネームが前後したりしなかったりするので、我々はよく、下の名前がラストネームだと勘違いされて、兄弟だとか聞かれたりしました、しまくりました。

 

「偶然です。ファーストネームがボルコフです」

 ボクは素直に答えるしかないので答える。

 しかし、ややこしいとは思っていたけど、同じ名前っていうのが何かの記号だったり、偽名っぽさを出してしまっているのか。

 なるほど、考えれば考えるほど、怪しいわボク。

 

 そんなこんなで弁明を繰り返し、その後、ニコライさんも弁明し、なんとか事務所から解放された我々は次に手荷物検査に通される。

 そこでもまだ疑われているので色々、聞かれる。

 このときのボクの心境としては、「もうアメリカ怖い。強制送還でも日本に帰れるならそれでいいかな」だ。だいぶ滅入っている。

 まぁ、荷物検査の人は先程までの人に比べだいぶフレンドリーだった。

 ここで賢いな、と思った質問がこれ。

「お前のスマホの写真を見せろ(意訳)」

 です。

 それをみて観光地の写真があったら、密輸とかせず、ちゃんと観光していたかがまるわかりというわけ。

 え、これめちゃくちゃ賢いな、1番はじめにやってくれよ。いや、マジで。いままでのやり取り全部、これで疑い晴れるじゃん。

 

 荷物も怪しいことはなく、やっと完全に解放され、入国できました。

 よかったよかった。本当に。

 

 さて、フライト予定時間からもう1時間もオーバーしているんだが?

 諸々、今日の予定がぶち壊された我々は果たして、購入済みのヤンキース対レッドソックスの試合までにニューヨークに辿り着くことができるのか?

 

 それでは次回、ニューヨーク編でお会いしましょう。

 みんなも英語は喋れるようになろうね。

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