冬の終わり、二月の暮れ、平日の午後一時半。
私は寒空の下に立っていた。
「ああ、しまったな。寝過ごしてしまった」と思ったのを覚えている。だって、せっかく1日券を買うのだから朝早くから来て遊び倒した方がお得に決まっている。
日を改めようかとも考えたが、私には今日でなければいけない理由もあった。
さぁ、対決だ、と勢い込んでチケット売り場へと歩を進める。
待ち合わせなんてものはない。これは初めから孤独な闘いだ。
私とレゴランドとの……。
さて、皆さんこんにちはこんばんははじめましておはようございます。
昨今、1人○○、ソロ○○というものが妙に流行っているな、という風に感じたことはないでしょうか?
1人旅、1人カラオケ、1人焼肉、ソロキャンプ、1人映画、ソロツーリング、メレム・ソロモン、ハン・ソロetc……。
なんでもかんでも1人でやりゃあいいってもんじゃないですが、1人というのは実際、とても気楽で楽しいのです。
かくいう私も孤独を愛し、孤独に愛されこれまでの人生を送ってきたので、1人は大好き。涙なんて隠してしまって、1人で生きるつもりだから。
しかしですよ、だからといって1人でテーマパークにいこうだなんてそんな寂しいことは私だって思わないですよ。これにはね、それはそれは深い事情があるのです。
これは2年ほど前のとある日、某知人からこんな連絡が入りました。
「卒業旅行にディズニーに行きたい」
と。
いいじゃん、勝手に行って来いよ、と私は思いました。
そんな風に思った私を冷たい人間だと思うでしょうか?
だって、別にボクぁ卒業しねぇもん。
もうその頃にはボクは高校も卒業し、大学も卒業し、前職も卒業し、絶賛ニート真っ最中だったわけで、残るはこの世界からの卒業、この闘いからの卒業しかねぇわけっすよ。
卒業旅行とは一般的に一緒に卒業する友人達と行くもんであってこんな赤の他人と一緒に行くもんじゃないだろう馬鹿たれ。いくらボクが時間を持て余してるからってなにからも卒業していないボクが卒業旅行になんて、
行くことになりました。
なんとまぁ、不思議なことに卒業旅行に行くことなったんですねぇ。曰く、誰も友人が一緒に行ってくれなかったとのこと。え?友達いないの?かわいそ……。
ということで卒業ディズニーに一緒に行くメンバーは以下になる。
・某知人(今年卒業)
・某知人の姉(ボクの友人、ボクより1歳年上、卒業しない)
・限りなく関係ない人その1(ボクと姉の友人、2歳年上、卒業しない)
・限りなく関係ない人その2(ボク、卒業しない)
うーん、本当にそれでよかったのかお前……。自分の姉と行く卒業旅行ってどうよ?
まぁ、そんなこんなで卒業ディズニーに行くことになった我々だが、ここでボクははて?と思いつく。
ディズニーに行くのはいいさ、でもボクは東海圏に住んでいるというのに行ったことがないじゃないか、そう
レゴランドに!
これはいい機会だ、と思いボクはディズニーに行く前日にレゴランドに遊びに行くことにした。1人で。これが地獄だと誰が、気付くものか。(目に見えて地獄ですが)
ということで前置きは長くなったが、前置きが長いのはいつものことだよね、こういう経緯でボクは1人レゴランドに行くことになったのだ。
どこまで話したかな、そうそう、1人でチケット売り場にいったところだったっけ。
看板に書いてある入園料をみる6900え、たかっ!
そうこの強気価格設定こそがレゴランドの魅力である。
まぁでも仕方ない、ここまで来て引き下がることはできない。
ボクは受付のお姉さんに高らかに宣言する。
「大人1人」
この時点で周りに他にチケットを買い求めるような人間の姿はなかった。
つまり、お姉さんサイドの見解としてもまごうことなく「こいつはレゴランドに1人で来てやがる」ということが察せたに違いない。
「近隣県の方ですか、近隣県の方ですと4900円で入ることが出来ます」
なんと!ボクは愛知住みなので4900円でこのレゴランドを堪能できてしまうというのだ。これはありがたい。6900円分の元を取るほど遊び倒すのは流石のボクでも少々骨が折れるってもんだ。
さぁ、夢の国(誇張表現)へ出発だ!
ボクはレゴランドに足を踏み入れて気付く。
人がいない……いやまさかそんなね。レゴランドと言えばディズニー、USJに次ぐ日本三大テーマパークの一つ。入園料がそう語っている。
しかし、確かに2月のド平日とくれば遊園地に人が集まりにくい日であるのも事実。ボクは偶然にもとても人がいない空いている日を引き当てたに違いない。
さぁ、それではアトラクションを見ていこうか。ボクはレゴランド内を逆時計回ってみることにした。
一番初めに乗ったアトラクションは潜水艦に乗って海を観察するヤツだ。
実のところ、このアトラクション普通に面白かった。だって2回乗ったもん。
これは潜水艦にのって実際に水の中に入り、魚などを観察することができるという”ちゃんと水に潜る海底〇万マイル”的なアトラクションだ。
不思議なことに潜水艦1隻につき、乗客が1名(椅子は10席くらいある)しかいなかったので艦内を自由に歩き回って観察することができ、大変快適に観察ができた。だってついつい連続でもう1回乗ったもん。列ないし。
惜しからむは何も事件が起こらないこと。これがディズニーとかUSJとかだと最後に「やばい!敵が襲ってきた」とか「浸水だ!」とかあるじゃん?絶対あると思ったのにね、なかったね、なんだこのアトラクション。
次に水上ジェットスキーみたいなのに乗った。これも面白かった。
あれ?レゴランドおもしろいじゃん?とボクもそろそろ勘違いし始めたところだ。しかし、面白いのがここまでだったとはまさか思いもよらない。
なぜだか、この先のアトラクションに関する記憶がない。今、地図を見ながら記事を書いているのだが、全然思い出せん。
ちなみに、あまりにも本日の来場者が少ないせいなのか、ショーは一切やってなかった。客を舐めるな!
次に記憶があるのが、空飛ぶ飛行機がぐるぐる回るアトラクションだ。これは別におもしろかったから覚えていたわけでない。
あまりにも人がいなくて稼働していなかったから覚えているのだ……。
ボクはアトラクションのお姉さんに「乗っていいすか?」と気さくに声を掛けたら乗せてくれた。よかった、壊れているわけじゃないんだ。ただ人がいないだけなんだ。え?遊園地でそんなことってある?
さぁ、ここまでアトラクションを堪能してきたボクだが、ものすごく時間が余ってきた。
なんてったってどこにも列ができてないもんだからすべてのアトラクションがスルーパスで乗れてしまう。待ち時間0分。
思った以上に時間が余っている。まだ3時くらいだったと思うが、ボクの記憶している最後にして最高のアトラクションがこちら!
スプラッシュ・バトル(調べた)
サメや海賊が待ち受けている海を海賊船にのってすすもう!それぞれの船には水鉄砲がついており他の船に乗っているゲストや船に積まれている宝箱を狙って命中させよう。海賊船に乗って出発したら敵の船と陸の両方から容赦なく攻撃や降り注ぐので気が抜けない。
https://www.legoland.jp/resort-guide/legoland/attractions/splash-battle/
なんておもしろそうなアトラクションなんだ。ザックリいうとみずでっぽうを撃ちながら移動する船を楽しもう、みたいなアトラクションだ。
しかも乗客はなんと1隻につき1人!(写真では10人くらい乗って気がするなぁ……)
ボクは海賊船の船長になって(誰もいないので自動的に船長)恐るべき海に繰り出した。だが、海賊船を操る人間はボクだけではなかったのだ……。
これもまた退屈なアトラクションか、と冷め切った気持ちで乗り込んだボクだったが、船の乗っているとどこかからか、水が掛かった。
なんだ?と思ったら、そう……敵船だ。
この船は何度もコースを折り返しながら進む。つまり、自分の船と一つ前の組の船は折り返す毎に一回だけすれ違うのである。このすれ違った瞬間にギリギリ水鉄砲の水が相手の船に届いてしまうのだ。
敵船の船長は前の船にのった小学生くらいの中国人っぽい少年。彼もまた1隻につき1人しか乗っていないので船長に違いない。
そう、この説明文にあった敵の船とはまさしく敵の船だったのだ。
ボクはもうお宝なんてそっちのけで、少年とすれ違う瞬間に水を掛けあうことだけに注力し、果敢に闘った。
なんだこのアトラクション……。
すべての乗れそうなアトラクションを乗りつくしてゲートに辿りついたのが4時過ぎ、寝過ごしたと思ったのが嘘みたいに、ボクは時間を持て余していた。
ボクはわりと人生何事も経験だと思っている。
やったことないことはとりあえず経験してみるべきだと思ってるし、それで広がる世界もあるし、実際に色々と広がってきた。
ただ、全部が全部やればいいってものでもない。絶対にやっちゃいけないことが3つある。
まず1つは薬物。
経験は試しにやってすっと足がひけることが大事である。薬物は依存性がある為、一度やったが最後、延々とやり続けてしまう。
これは経験の本質ではない。ダメ、絶対!
2つ目は殺人。
言うまでもなく大罪だ。
人というのは極論生きる為に生きている。だから、この世のあらゆる人間というのは生きるという目的だけは必ず持っていてそれを断つことは神の所業であり、決して許されることでないのだ。
3つ目は1人レゴランド。
単純に退屈だし、この退屈さを一緒に笑い合える友人がいないというのは思いの外、苦痛だ。
こんなレゴランドですが、皆様もこの災禍が収束した後にはぜひ行ってみてはいかがでしょうか?人生何事も経験ですよ。
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