ラスベガス、それは狂乱の街。
ラスベガス、それはアメリカンドリームの権化。
ラスベガス、それは数多の敗者の上に聳え立つコンクリートジャングル。
我々も旅の最後を飾るべく、なけなしの金を握りしめ、カジノへと向かう……。
……。
……はい、嘘を吐きました。
ボクは自分の運のなさというのを人生で痛感してきているので、勝ちは求めずに、気分だけ味わおうかと。
そんなわけで、100ドル札を1枚だけ握りしめ、カジノへと向かった。
ギラギラと目の痛くなるような装飾のスロットや機械が立ち並ぶ中、せっかくなのでここはやはりディーラーに相手をしてもらおうとテーブルを探す。
テーブルの横には最低ベット金額が書かれているが……50ドル!?25ドル!?
ダメダメ!こんなレートじゃすぐに終わっちゃうわよ!
せっかく来たんだから長くテーブルに座って楽しみたいじゃない、と貧乏人丸出しでレートを見て周る。
10ドル。
お、これくらいなら数回は遊べるぞ、なになにゲーム名は……3カードポーカー。
知らない。
カジノのポーカーとブラックジャックは予習してあるけど、3カードポーカーは知らない。
あわててその場でググる。
まぁ、ルール的には普通のポーカーと大差なくて、カード交換がなく、自分の配られた手札だけで勝負に出るか決めるくらいか。
そしてフラッシュ(すべてのカードスートが一緒)が2ペアより弱くなってる。
あとはワンペア以上にボーナスがもらえるように追加ベットする場所があるらしい。
なるほど、それくらいか。
これならやれそうだ。
ボクは緊張しつつも席につき、壮年の男性ディーラーの前に100ドル札を置く。
これがボクのすべての勝負金だ!
ディーラーはそれを受け取り、20枚の5ドルコインを寄越す。
そして、こちらが初心者だとわかったのか、賭け方を説明してくれる。
まず、アンティの枠に10ドルを置く。
そしたら、ワンペアボーナスの枠に5ドル置く、えっ、強制なの!?
そして6カードボーナスに5ドル、えっ、なにそれ知らない!?
つまり、勝負の土俵に立つまでに20ドル、そしてベットで10ドルいるから1勝負30ドルないとはじめられないってこと!?
100ドルじゃ一瞬じゃん!3連敗したら終わりじゃん!
しかし、このゲームは勝ち負けに関しては公平なのでさすがに3連敗することはなかろう。
ただ、五分五分の場合、アンティ分だけ目減りするので、当然、上振れしないとすぐにゲームは終わってしまう。
よし、はじめるぞ、と意気込んだところで隣の席にお兄さんが座った。ディーラーとタイマンかと思ったが、そうではなくなってしまった。
ボクは精一杯虚勢を貼る。ボクはギャンブラーだぞ!なめるな!
さて、前置きが長くなったがようやくゲームが始まった。
初めての3枚。数字はバラバラだ。これじゃ負け……いや待てよ、これ全部スペードじゃん!フラッシュだ!
もちろん勝負だ!ベット!
ディーラーのカードが捲られる。5のワンペア。
勝ち!
これは幸先がいいぞ!
賭け分とワンペアボーナスで20ドル増えた、はず。
良し、このまま……。
さて、この調子で数ゲームを続けていたのだが、このゲームの性質についてわかったことがある。
基本的にワンペア以上が出れば勝てる。ワンペアがあったら迷わずベットして良い。
勝ち負けを左右するのはハイカードだ。自分のカードを見て、どの数字があったら勝負に出るか、これが目減りしない鍵だ。
ここまでやってきた感覚としてはQあたりがボーダーだ。この前後で行くか行かないかの判断になる。
そして、ハイカードで勝った場合、ボーナスが乗らないのでトータルでの収支がプラマイ0だ。このへんの計算はボクも戦いの中で学んで正確には理解できていないので、自分でググってみてほしい。
つまり簡単にまとめると、最低ベットで戦った場合、
・ワンペア以上で勝つ→金が増える
・ハイカードで勝つ→変わらない
・負ける→金が減る
・降りる→金が減るが負けよりはマシ
といった感じみたいだ。加えて様々なボーナスもあるので一概には言えないが。
こんな研究をしている間に、ボクの軍資金は底をつきかけている。
アンティ・ボーナスを出したら残り30ドル。ベットをしたら次のゲームにはいけない。
ここは慎重に行かないといけない。
配られたカードを捲る。
これは……クラブのフラッシュ!!!
本日2回目のフラッシュである。
迷わずベットだ!!!
当然、勝つ。ここまでの研究の成果が出ている。
ふう、なんとかこのゲームを理解できて
「GREAT!Are you happy?」
ん???
そりゃ勝ったんだから嬉しいけどさっきも出たし、そんな騒ぐようなことか?
ディーラーはしきりに自分の手札を見せる。
ボクは頭にはてなを浮かべ続けている。
ピンと来ていないボクに対し、ボクの3枚のクラブとディーラーの手札の2枚のクラブを順番に指差して、
突然、50ドルもらえた。
通常の勝ち分の他に50ドルもらえた。
これは……。
これはマズいぞ……。
たしかにここまでふわふわとしたルールでやってきてはいたが、このゲーム、ボクの知らない要素がまだ山程ある。
これはよろしくない。
この戦い、知らない要素がある限り、絶対に(カジノサイドが想定する)イーブンにはならない。
自分の至らなさを理解した瞬間、引き際が見えた。
あと数ゲームだ。
これ以上長く、居座ってはいけない。
結局、このあと3ゲームして降り勝ち負けでボクは席を立った。
途中の計算が間違ってるかもしれないが、最終的に30ドルの勝ちだ。
十分楽しんだし、アメリカンドリームを掴めはしないが、上々の出来だろう。
軍資金もちょっと増えたし、次のゲームでもやってみようか、とうろうろしながら、
ニコライ・ボルコフと合流した。
彼はボクの勝ち分の10倍負けていた。
「メシ食いに行くか」
これが我々のカジノ体験のすべてである。
しかし、ラスベガスのカジノはこれから起こる事件の序章に過ぎなかった。
翌朝6時45分、グランドキャニオン1泊2日に向かう為にツアーのバスを待つ。
来ない。
いくら待っても来ない。
ここでニコライ気付く。
待ち合わせ場所がホテル、または別途ご案内になっている。
我々、別途ご案内されていないのだ。
ツアー会社の伝達ミスによりピックアップされない。
連絡も通じない。
結局、連絡が通じたのは朝9時。
当然、もう追いかけることもできないし、代替ツアーもないらしい。
こうやって、無駄にラスベガスでの滞在が1日発生した。
しかも、その日は行くところ行くところやってなかったり満員だったりと空振り続き、良くないことは重なるということだ。
うーん、気を取り直して翌日。
1泊2 日にはならなかったものの、グランドキャニオンは是非行きたかったので、別の日帰りツアーに参加する。
無事、バス乗車。
一安心だ。あとはグランドキャニオンに行くだけ。
着いたーーー!!!うおーーー!!!すげーーー!!!
マザーポートというスポットで降りる。ここでツアーが英語ガイドということもあり、慎重を期してもらった地図を指差しながら集合場所と時間を確認する。
「ワンサーティ、ディススポット?」
「Yes」
どうやら1時半にブライトエンジェルロッジというところの駐車場で間違いないようだ。
ボクは地図の場所に赤ペンで1:30と書き込んだ。
過剰に警戒しているように見えるが、ボクは心配だったのだ。ここまでアメリカはトラブル続きなので、最終日くらい安心したいのだ。
さぁ、安心したところでマザーポイントからの景色を見た。
うおーーー!!!グランドキャニオンすげーーー!!!
やっぱり来てよかった!!!
適度に移動しつつ、グランドキャニオンの景色を堪能する。
適度に移動しつつ。
適度に。
ん?
これルートを間違えていないか?
ツアーのプラン上、このヤバパイポイントとかいうところには来ることになってなかったはずだ。
しかし、ボクらは来てしまった。
これは予定のルートを外れている。
慌ててグーグルマップでブライトエンジェルを調べる。ここから歩いて40分
。大丈夫、まだ間に合う。
ボクらは景色も程々に早足になった。
なんとしてもバスに乗り遅れてなるものか。
「オレは別に乗り遅れて一泊追加でもいいいけどね」
とか隣でほざいているヤツがいるが、ボクは困る。嫌だ。
よし、このペースなら間に合いそうだ。
このペースなら?
ボクは一抹の不安を感じた。
ルートを間違えたとはいえ、遠すぎないか?
ランチタイムも兼ねているこのスポットでの観光がこんなに歩き詰めになるわけあるか?
いや、しかし、ボクはそんな心配をしたくないからガイドに聞いたのだ。だから間違っているはずがない。
はぁはぁ、なんとか時間に間に合ったぞ、ほら、ここに、バスが待って、
いない!!!
バスがいないのだ!
だって1:30にブライトエンジェルって!
焦ってツアー会社に電話する。音声案内、ああもどかしい、1だ!
通じた。
しかし、相手は当然英語だ。
ボクはしどろもどろになりながら、今ツアーに参加したこととバスロストと名前を伝える。多分、伝わらなかった。メッセージで送り直せと言われる。
仕方がないので、メッセージを色々開いてそれっぽいところに送っ
たところで、バスが見えた!
今、入ってきた!
ブライトエンジェルの駐車場に今、バスが入ってきましたよ奥さん!!!
ボクは駆け出して手を振る。
よかった、本当によかった。
バスからガイドが出てくる。
会えて本当に良かった的なことを言っている。とりあえず、ベリーソーリーと言っておく。
どうやらボクが
「ここに1:30(まで歩いていけば良い)ですか?」
と聞いたのに対し、
「はい、1:30(にバスがそこへ出発)です」
というやりとりをしてしまったらしい。うーん、英語は難しい。いや、日本語でもミスりそうなやりとりだ。
次はここ(ブライトエンジェルロッジ)に3時まで滞在するらしい。
「スリーオクロック、ヒア?(力強く地面を指差す)」
「Yes.Here.(力強く地面を指差す)」
その後、心配だったのでもう2 時半にバスに乗り込んだ、もう置いてけぼりは懲り懲りだ。
さて、これで私の旅はおしまいだ。
あとは日本に帰るだけである。
この旅を通じ、痛感したのはトラブルは心と身体をとても疲弊させるということ。我々が普段、日本で生活している上でどれほどトラブルを少ないかということ、そして、トラブル対応が容易で有ることのありがたさを改めて感じた。
旅にトラブルは付き物だとはいえ、そのトラブルがこれほど立て続けに起こると流石に心身ともに疲弊し切る。
実際には、ブログに書き切れないほどまだまだたくさんのトラブルがあったのだが、まぁそれはボクと直接会ったときにでもゆっくり聞いてくれ。
それでは、長いブログシリーズになったがこれにてお別れだ。
また、いつかお会いしましょう。
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